社長スペシャルインタビュー

異業種から建設業を支える製造業へ

森鉄工業の新社長に聞く

会社の未来と
中小企業の魅力

有限会社森鉄工業 執行役社長 西山 公春

地方創生の鍵は中小企業の事業継承にあり。
経験を活かし、社会に還元する。

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プロフィール紹介

Q 森鉄工業執行役社長へ就任するまでの履歴・経歴を教えてください。

北海道江別市出身です。北見工大卒業後、1985年に大手水処理会社である、栗田工業株式会社の子会社である、栗田整備株式会社㈱に入社しました。その後、栗田整備は栗田工業と合併し、私は栗田工業の所属となりました。

入社4年目に栗田工業が納入した水処理装置のサービス部門に異動となり、お客様との接点が増えました。主に半導体・液晶・電子部品を製造するお客様を担当しました。
当時、日本は半導体で世界を席巻していましたので、設備投資がとにかく旺盛であり、お客様が求める品質・スピードに応えるべく、仕事に没頭していました。

多忙な故、実力は実感するほど身につく、お客様から信頼される、業績が上がるなど、今日の基礎が身に付いたと思います。お客様からの期待に応え、お客様から信頼を得る(頼りにされる)ことの喜びが、私の原動力になっていたのだと思います。

その後は主に半導体を製造するお客様を対象に水処理装置の新設営業や納入後のサービスを提供する部門ででほぼ全国を廻りました。
今思い返すと、仕事で行ったことがないのは、沖縄、富山くらいですね。
北海道も2度ほど担当していました。

前職のメンバーは今、どう思っているかわかりませんが、「暑苦しいやつだなあ~」思っていたと思います。

経営参画の理由と経緯

Q 異業種からの経営参画となった経緯と、森鉄工業を選んだ理由を教えてください。

本音は、お客様への貢献を通じて、社会に貢献する仕事を続けたかった。規模としては、部下500名 売上1000億円の仕事をしたかったのですが、実力不足で出来ませんでした。

前職での最終のキャリアが見えてきたころから、まだビジネスで燃え尽きていない自分に気づきました。
折角、前職で学んだ経営力、マーケティング、人材育成、ビジネスアイデアをどこかで実行してみたいと想い、地方の後継者問題にお困りの企業様の経営に参画できないかと模索をしていました。
ある企業様とは会社譲渡の話まで行きましたが、やはり同族企業は難しく実現しませんでした。自分で探すととともに、私のような人材をスカウティングする会社があり登録をして何社かは面接しました。

森鉄工業との縁は、人材スカウティング会社からの紹介が始まりです。栗田工業という、プラント関連と森鉄工業の金属加工(製造業)はそれなりに緊密性が高いとして紹介されたわけです。

森鉄工業に最初に訪問した時は、話には聞いていましたが、「やはり古い」「小規模」が外観からの印象です。
しかし、森前代表や社員の方々にお会いして「活気にあふれた会社」がこのような場所、境遇にあるのかと衝撃を受けました。この衝撃から、私でよければ森前代表の設立趣旨、鈴木現代表の成長戦略を融合した形でやってみたいと思い決めました。

Q 経営者になる前の自身のキャリアと、M&Aとビジネスマッチングによる経営者就任について振り返ってみてください。

前職では36歳で課長、45歳で部長になり、チームで何かを達成する立場になりました。
一人ではできないこともチームではできることを身に染みるほどわかり、周囲の方々に助けて頂くことばかりで感謝に堪えません。
苦しいこと、辛いことも多数経験しましたが、チームで達成することの喜びに麻痺してしまったのですね。

前職の管理職の最終局面では、部下約40名の部隊を任せて頂き、営業利益率は17%を達成していました。前職での管理職になると、年度の目標は当然のこと月次決算で売上、利益、販管費等の勘定品目を一通り管理し、課題の抽出と改善を実施していたので、ある意味中小企業の経営者に近いと考えていました。
しかし、いざ経営者に就任するとその違いに日々驚きの連続でした(今も驚きが続いており、刺激的な日々を過ごしていますが)前職での部長職は営業部隊のリーダー。
しかし経営者になり現場を預けていただくと総務、経理、デジタル・労務管理、行政対応等のありとあらゆることに関わり、責任を持つことになりました。
最初は「こりゃ参ったな」と思うこともありましたが、自分で決めたことだからやるしかないと思いました。

今は、自分の人生は一度なので、やれるだけやり死ぬときには「まあっいいっか」と言えるように全てにおいて前向きに熱く取り組めるようになりました。

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建設業界の現状と課題、森鉄工業の取り組み

Q 建設業界の現状と課題をどのように捉えていますか。森鉄工業ではどのように取り組んでいますか。

就業者の減少と高齢化は止まらないと考えています。人口減少の歯止めはかからない。外国人の方の就業もある程度のところで頭打ちになると想定しています。
デジタル化も進むでしょうが、まずは、設計や生産管理等のバックヤードから始まる。大手が先鞭を切り地方企業への展開は10年先、20年先となると思います。

災害等も多発しインフラ需要も今後多くなると想定しています。建設業全体としては市場としては決して暗くないと思っています。しかし、従事する方々がいなければ建設業は立ち行かなると考えています。休日、福利厚生を充実させてもやはり就業者数の減少を想定した事業改革が必須と考えています。
就業者の減少と高齢化は特に現場に従事する方でより顕著になると思います。今後は少人数で質の高い建築をどのようにするかが大きな課題ととらえています。

建築現場は「生き物」です。日々状況は変化する。工事会社様は用意周到な準備をされて着工されますが、中々想定通りにはいかない。準備した資材、機材、製品が設置できないことは多々あると考えます。この部材、商品がないと工程が遅れる、作業員の方の生産性が落ちる、引いては元請け様、施主様にご迷惑がかかる。投資回収に影響がでる、地域経済にマイナスになる。いいことは一つもないと思います。

森鉄工業は、このような状況が少しでも改善へ向かうお手伝いをするために、空調ダクト、架台等の特急、特注に特化した製造会社です。
現場進行中は、中々正確な図面はかけません、手書きの図面やメモでも大至急製作する必要があると思います。このような状況に対応するのは森鉄工業のポリシーであり、パーパスです。

森鉄工業は依頼された仕事は基本お断りしない。当日完成も日々対応することで「現場の悲鳴をゼロにしたい」「建築現場の一番の弱者である作業員の方を少しでも楽にしたい」を日々の活動のベースにおいてものつくりに励んでいます。

森鉄工業の強みと中長期の展望

Q 森鉄工業の強みや特色は何だと考えていますか。事業継続に向けた中長期的な展望も教えてください。

先にも述べましたように、特急特注品の少量多品種生産です。
現状はこのモデルを更にエッジを効かせるようにしていく考えです。

中長期的には、やはり全国展開を考えています。2023年3月に株式会社エヌ・エス・ピーの傘下に入りました。
親会社の資金力、営業力、商品開発力と組み合わせて、森鉄工業のビジネスモデルを全国に展開していく展望です。その時には、北海道札幌市の森鉄工業はマザー工場としての役割も果たすことになると思います。

経営理念の浸透と働き方改革

Q 経営理念や社是、目指す会社像などをどのように従業員に浸透させていますか。

経営理念、社是は現在策定中ですが、大上段に構えるのではなく、社員とよく話合いをして策定していきたいと考えています。
この社員との話合いこそが、「浸透」になると思います。
森鉄工業の主役は社員以外のなにものでもありません。よく言われますが、「人材」ではなく「人財」ですね。

2024年度の運営方針は以下にご紹介します。

あるべき姿
お客様にとって、無くてはならない会社で有り続ける

運営方針
工事現場を森鉄工業の力で遅延させない。

Q 働き方改革や人材育成、地域貢献などへの取り組みと今後の方針を教えてください。

遅まきながら、2024年5月1日より就業規則の運営を開始しました。
2024年度は就業規則に基づき業務を遂行し、本当に森鉄工業に合致したものに改定していく時期だと考えています。基礎となる根拠は親会社の就業規則を活用していますので、福利厚生、休日も中小企業としては充実していると思います。まずは社員とともに、PDCAを廻して改善していきます。

働き方改革
森鉄工業は、特急、特注に特化しており、現在は変形労働制を採用しています。
年間休日   : 108日
有給取得目標 : 7日以上
年間休日   : 115日以上を2024年も目標にしています。
有給取得を推奨するために、業務量に応じて「有給取得推奨日」を設けています。
お客様には事前にご連絡してご協力をしていただいております。

2023年10月1日から2024年4月30日まで(7ケ月)の業務残業の概算は以下です。
1.製造、図面確認、見積作業:約110時間(11時間/人)→約1.5時間/人/月
2.早朝除雪:約60時間(6時間/人)→約1時間/人/月

人財育成は、育成計画書を制定しトライアルを行う時期です。まずはやってみる。
改善すべきところは即座に改善する。中小企業の強みを発揮したいと考えています。

地域貢献は、まず近隣住民の方々との信頼関係の維持・向上ですね。冬季のボランティア活動も継続して行きます。
地域貢献は、第一に現社員が安心して定年まで働ける環境(年収、職場環境の向上維持)作り、第二に、就業機会の創出を今は考えています。

森鉄工業社員の年収は、北海道平均より高いです。これは維持、向上させていきたい。
森鉄工業は特急、特注、少量多品種のため自動化のハードルが高い、よって森鉄工業の最大の資産であり経営資源は「社員」です。この軸をぶらさずに経営をしていく所存です。

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中小企業の魅力と後継者不足問題への提言

Q 後継者不足など中小企業が抱える経営課題解決に向けての考えや提言をお聞かせください。

単純に考えると「魅力ある会社への変貌」に尽きると思います。
後継者不足、待遇、福利厚生、給与等細分化すれば多数の課題はあると考えますが、大局的にみると「魅力ある会社への変貌」に尽きるかと思います。

企業存在意義(外部の方から見て解りやすい)を各企業様は整理され、各企業様の課題の設定と解決策の模索を正面から取り組むことである程度のことは解決すると考えます。

近隣の企業様で経営が苦しい企業様もおられると思います。

まずは、火急的対応は適正価格での販売かと思います。やはり会社に利益がないと社員の福利厚生も実現できないのが現状だと思います。
過去のしがらみを一度リセットして適正価格への転換をご推奨します。

Q 異業種からの経営参画という経験から見て、中小企業の魅力や強みは何だと感じていますか。

異業種というよりは、大企業からの経営参画、経験から見ての中小企業の魅力や強みでいいですか。

魅力は、お客様の声、社員の声がダイレクトに経営に反映できる点だと思います。
大企業のようなセクショナリズムをもっていては、中小企業は倒産します。
全員攻撃、全員守備ができるのが魅力だとおもいます。
現場にいる社員もお客様からの「ありがとう」が励みになる。お客様のご意見で改善に取り組む。森鉄工業の最強の営業マンは「社員」です。この考え方や実行は中小企業でないとできないと考えます。

強み:規模が小さいが故にスピード経営ができる点が最大のポイントだと思います。
国内の経済状況はいつ、どこで、何が起こるかわからない、発生した事象に臨機応変に対応しないと企業存続は難しく、成長もできないと思います。

大企業は新規事案創造、クレーム対応では、社内政治がまだ蔓延っていると思います。これでは、社員が単なる「駒」でしかない、中小企業は社員全員が主役です。個人への権限移譲、責任の取り方(罰則ではなく、改善するまでやりきることを責任と定義します)もダイナミックにできます。
この強みを生かして、エッジの効いた事業転換ができると思います。

社内のことで申し訳ないですが、稟議書を親会社に申請します。
せっかちな性格なので、早朝(7時前)によく申請します。これに対してのレスポンスが早いこと。
稟議案件は、稟議が決裁されるまでは何もできないのですが、現代表のレスポンスの速さを想定して下準備をしておかないといけない状況です。
前職では、稟議書の承認まで時間を要すことが多々ありました。決裁までの審査に関わる部署が多く、稟議書を通過させるのにエネルギーを費やしたことを考えると非常にやりやすいですし、やりがいがあります。

森鉄工業への想いと求職者へのメッセージ

森鉄工業は創業者の森敏樹様の想いと市場からの要請で誕生した会社です。
あるべき姿に記載したように、お客様にとってなくてはならない会社が創業理念と言えます。

創業者の想いと現代表の戦略を具現化することでさらなる事業拡大を行い、建設業界の適正な繁栄に寄与したいと考えています。

求職者の皆様へ

森鉄工業は、社員10名ほどの中小企業です。
しかし、個人の意見を尊重し、事業貢献を行うことで人として成長できる会社と考えています。
未経験者大歓迎です。モノづくりに興味のある方、建設業界の健全化に取り組みたい方を募集しています。
ご縁があれば一緒に成長できる機会があれば幸いです。

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最後に・・・

地方創生が謳われて久しいですが、やはり地方中小企業の事業継承課題は解決できていません。
企業間合併も選択肢の一つしてあると思いますが、大組織で切磋琢磨し、自らの経営スキル技術蓄積、マネジメント力を身につけた方は、ぜひとも中小企業の事業継承課題に取り組むことをご推奨します。
私も迷いがなかったわけではありません。しかし、みなさん一度の人生なので、悔いなく生きるため、企業で身に着けたスキルを社会に還元する意味でも挑戦することをご推奨します。